癒しの音楽編 (荒城の月=三橋美智也)

えっ?『荒城の月』と思われた方が多いのではと思います。三橋美智也と言えば、『古城』と言われる方が、大半かと思うからです。確かに、『古城』も私にとっては、なじみ深くしかも思い出深い曲です。ですから、三橋美智也の事をブログに書こうと思った時一番に、浮かんだのが、『古城』でした。色々な曲をこの一週間、検索しました。『古城』も古いバージョン、新しいバージョンを聴きました。数多あるヒット曲の数々。その中で突然、耳慣れているようで聴いた事のないこの曲が耳に入ってきたのです。

目次
 Ⅰ 三橋美智也について
 Ⅱ 癒しの音楽編 (荒城の月=三橋美智也)
 Ⅲ メリスマよりこぶし

Ⅰ 三橋美智也について


 三橋美智也(みはしみちや 本名北沢美智也、1930年~1996年)、北海道上磯郡上磯町生まれ。函館市育ちの流行歌手。民謡で鍛えた伸びやかな高音と絶妙なこぶし廻しを持ち味に、昭和30年代の日本の歌謡界の黄金期をきづく。数多くのヒット曲があり、販売枚数は、なんと1億6千万枚以上(レコード)と言われています。今活躍しているB’Z(CD)でさえも8148万枚ですので、凄さがわかります。おそらく、彼を超える歌手やアーティストは、当分、出てこないと思います。これほど、売れたのは、老若男女すべてに受け入れられた歌手だからだと思います。事実、私は、小学生の頃、夏祭りで、『古城』を聴きました。にぎやかな中で聴く物悲しいメロディーと声は、私を強く捉えて離しませんでした。
 その頃、私の家には、彼の民謡集のレコードがありましたので、よく聞いていたのを覚えています。小学生で民謡に痺れたのですから、彼の歌の説得力は、凄かったのだと思います。歌が上手いのはもちろん、ちょっぴり田舎臭い雰囲気がなんとも言えず、好感を持ちました。多分、彼の歌は、あまり口を大きく開けて歌いませんが、さらりとしかし、綺麗な日本語がはっきりと伝わります。そして、歌が見事に完成しているのです。さらりと簡単に歌うのですが、その中のこぶしは、何度聞いても、何度まねてもマネできるような歌ではありませんでした。
 何故だか、アメリカのスティービー・ワンダーの歌を思い出します。シンギングスタイルもリズムも違いますし、パーカッションを強く打ち出したスタイルもまるで違うのにです。その理由は、三橋美智也さんの出発点は、民謡だからだと思います。そして、スティービーは、恐らくゴスペルやリズム&ブルースつまり、彼と同じようにアフリカの民族音楽が出発点だと思います。スティビーは、それを色濃く反映したモータウンサウンドの中で育ったと思います。つまり、二人とも、民族音楽が出発点だという事です。最初に、私が、三橋美智也には、田舎臭さがちょっぴりあるといったのは、このためだったのです。そう、スティービーにも田舎臭さを感じます。どちらかというと都会的なスマートさが二人にはありません。しかし、それがなんともいいのです。そして、かっこいいのです。

Ⅱ 癒しの音楽編 (荒城の月=三橋美智也)


 この曲は、日本の詫び・さびを歌った歌です。歌曲ですので、当然こぶしが全くありません。土井晩翠が作詞をし、滝廉太郎が作曲をしました。三橋美智也の民謡で鍛えた本来の特質というべきこぶしを全く使っていません。それでも、私の心に、静かに染みいってきます。似た趣の曲で彼の最大のヒット曲、『古城』は、少し、こぶしがあります。が、厳粛で静かな曲のため、最小限にとどめています。私は、こぶしを全く使わない歌を聴いたのは初めてで、ある意味衝撃的でした。それだけに、相当な覚悟で歌ったのではないかと想像します。多分、声楽家が民謡を歌うような、民謡歌手がオペラを歌うような気持ちだったと思います。声楽家が歌う『荒城の月』は、朗々と歌います。しかし、三橋美智也さんは、日本語の美しさを大切にしながら、あまり、張り上げずに歌っています。まるで、日本家屋の座敷でしんみりと聴いているような感覚です。派手さや声の力、こぶしに頼らないこの歌声は、日本人の謙虚さがある中に自分の秘めたる思いやエネルギーが余計に伝わってきます。これは、そういう曲だと思います。こぶしの全くない『荒城の月』を是非とも聴いてみて欲しいと思います。

 Ⅲ メリスマよりこぶし


メリスマという聞きなれない言葉が出てきましたが、三橋美智也のこぶしを語るうえで、メリスマの引用をした方がいいと思い書いています。メリスマというのは、メロディーの一音に二つ以上の音符を当てはめて曲付けをする仕方を言います。従って、一音節に音の数が増えれば増えるほど、歌う技術が難しくなります。世界的には、900年頃のグレゴリオ聖歌の楽譜にメリスマが使われるようになったそうです。このメリスマを使った民族音楽では、ヨーデルや日本民謡の「江差追分」が有名だそうです。この「江差追分」は、三橋美智也が10歳の時にレコードを出しています。この事から、三橋美智也は、歌の天才である事がわかります。難曲中の難曲です。
 三橋美智也のこぶしの特徴を私が話すのは、おこがましいですが、私が感ずるままに書いていきたいと思います。彼のこぶしは、メロディーの美しさを損なわず、さらりと気づかないように歌っています。ごつごつせず、滑らかな感じがします。だから、ゆっくりした静かな美しいメロディーには最適な歌い方のようです。私には、時にはレガートに聞こえたり、マルカートに聞こえたりもします。声自体は、強い声帯ではありませんが、コントロールされたこぶしのある歌唱は、唸るしかありません。
 ヨーデルの事を書きましたが、『達者でな』には、ヨーデルの様な掛け声があります。何の気負いもなくさらりと歌う技術にも驚かされます。現在、三橋美智也の歌声を聴くことが少なくなっています。『荒城の月』のようなこぶしのない曲も素晴らしいですが、彼の真骨頂は、やはり、素朴なこぶし廻しだろうと思います。いつか、TVやラジオで聴ける日が来ればと思います。

Neospacefuu

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