アルフレッド・ハウゼ(1920~2005)は、コンチネンタルタンゴの王様というべき人です。一番有名な楽曲は、『ラ・クンパルシータ』でしょう。子供の頃、この音楽に合わせて、ふざけて踊った記憶があります。タンゴは、社交ダンスで使われる音楽です。歯切れのよいリズムにオーケストラの中で使われるバンドネオンやイングリッシュホルンの音色は、大人の雰囲気の中に愁いを秘めた郷愁というものを感じます。癒されると同時に踊れるというのは、タンゴの特徴です。が、『真珠とり』は、踊るというより聴かせる部分を前面に出した美しい楽曲となっています。
目次
Ⅰ アルフレッド・ハウゼについて
Ⅱ 癒しの音楽編 (真珠とりのタンゴ=アルフレッド・ハウゼ楽団)
Ⅲ 踊りは人類の癒し
Ⅰ アルフレッド・ハウゼについて
アルフレッド・ハウゼは、ドイツのヴェストファーレン出身のコンチネンタルタンゴの演奏家です。コンチネンタルタンゴというのは、アルゼンチンタンゴに対してつくられたヨーロッパのタンゴの事を言います。和製英語になります。
ハウゼは、ワイマール音楽院で元々は、バイオリニストとして勉強していました。有名な音楽家は、ピアノかバイオリンのどちらかを習うのが常のようです。ただし、ピアノの基礎を習った上で、バイオリン演奏を習うのが音楽の情操教育のルーティンの様な気もします。特に指揮者は、鍵盤楽器か歌が出来ないと自分が演奏者にどう演奏して欲しいかを伝えるのが難しいようです。私の大学の時の合唱団の指揮の先生は、合唱指導をする時は、必ず、オルガンで伴奏をつけたり、又、実際に模範唱をしたりしながら、指導してくれました。もちろん、指揮そのものでリズムや表情をつけたり、先生の顔の表情に合わせて、歌う事が出来ました。その指揮のおかげで、合唱団は、知らず知らずに音楽の世界に引き込まれていきました。
きっと、ハウゼもその卓越した指揮で、聴く者の心を捉えて離さない癒しのエネルギーを積み上げていったのではと思います。そのタンゴのリズムのエネルギーに乗せられて、身体を動かさずにはいられない人達は、今でもダンスクラブで、踊り続けているのだろうと思います。
ネットで、ハウゼは、事故で楽器類を逸失した事と長い闘病生活の末、84歳で死去。と書かれているだけで、あまり、大きな災難はなかったようです。これまで、様々なアーティストの事を書いてきましたが、これほど、平穏な一生を終えた人は、初めてのようです。
Ⅱ 癒しの音楽編 (真珠とりのタンゴ=アルフレッド・ハウゼ楽団)
さて、この『真珠とりのタンゴ』という曲は、ジョルジュ・ビゼーが、オペラ『真珠採り』の中のテノールのアリア『耳に残るは君の歌声』として作曲したものです。もちろん、オペラのアリアとして聴くのもいいのですが、タンゴとして聴くこの曲も素晴らしいので、ここに紹介しました。最初、タンゴとして、この『真珠とりのタンゴ』を聴いた時、全くオペラの曲である事を知りませんでした。オペラのアリアというと、大抵の場合、曲の終わりのクライマックスに、最高音を朗々と響かせるのが常ですが、この曲は違っているのです。どちらかというと、メロディーの美しさを最初から最後まで終始聴かせます。しかもピアノ(弱く)で。所謂、ドラマティックさがないのです。そこが、この曲の良いところなのですが。タンゴでは、その良いところが十分に活かされていると思います。ハウゼは、その甘く美しいメロディーをオーケストラで、過不足なく演奏しています。素晴らしいとしか言いようがありません。
Ⅲ 踊りは人類の癒し
アルフレッド・ハウゼは、アルゼンチンタンゴを下敷きににて、ハウゼのタンゴを作り上げたようです。タンゴですので、リズムは共通しています。間違っていたら、訂正をお願いします。どちらにしてもこのリズムが聞こえると踊りだしたくなるのは間違いありません。
踊りの起源は当然わかりませんが、元々、ダンスは、娯楽としてではなく、宗教の儀式やお祭り、雨ごい、豊作祈願の時に踊るのが発祥のようです。とは言え、打楽器の一定のリズムを聴くと踊りたくなるのは、古今東西同じだろうと思います。古い時代は、当然、打楽器しかなかったので、そのリズムに合わせて踊るのが自然な気がします。しかし、楽器や服装そして、家屋等が発展すると外だけではなく室内でも踊るようになるのは当然です。
人類最初の記録に残るダンスは、8000年前のベリーダンスだそうです。今でも、そのダンスがあるというのは、このダンスは文化的大発明だったのかもしれません。しかし、このダンスは、するより見て楽しむ要素の方が強いようです。次に1000年以上の歴史を持つ民族舞踊のフラダンス。12世紀ごろヨーロッパの王侯貴族から始まった、社交ダンス。この社交ダンスの中には、現在競技ダンスとしてスタンダードダンスとラテンダンスの二つがあります。そのスタンダードダンスの中にタンゴがあるのです。
その他にバレエ。タップダンス。フラメンコ。チアダンス。モダンダンス。ジャズダンス。サルサダンス。コンテンポラリーダンス。ストリートダンス。ソウルダンス。ヴォーグ。ロックダンス。ポップダンス。ブレイクダンス。ヒップホップダンス。ワッキング・パンキング。レゲエダンス。等他にもありますが、挙げたらきりがありませんのでここまでにします。ダンスは、個人の嗜好で踊るダンスもあれば、公衆で披露することで仕事になるものもあります。このように色々なダンスが生まれるのは、まだまだ、ダンスに発展途上の余地があるからだと思います。
タンゴは、現在、社交ダンス競技の中にあります。この歯切れ良いリズムは、分かりやすく人々の心にアルフレッド・ハウゼの音楽を通して日本人の心に広く深く染み込んでいます。皆さんも、彼のオーケストレーションの素晴らしさをもう一度、味わって見てください。